「ハトと電線」記念対談 第3回

こんのひよせ × 岡本洋平(Hermann H.&The Pacemakers) 「ハトと電線」対談 第3回

こんのひよせと岡本洋平(Hermann H.&The Pacemakers)の、アルバム「ハトと電線」発売記念対談の第3回。

ほぼ岡本プロデュースで行われたアルバム収録曲「鳩と電線」「金色夜叉」2曲のレコーディングを振り返ります。

最終回の今回は、岡本のバンドメンバーであり今回のレコーディングにも参加した溝田志穂の話題が登場。

再始動間近のHermann H.&The Pacemakersへの想いも語ります。


第3回【終わらないんだな、っていう】 

 

ひよせ レコーディングをした時に思ったんだけど、たとえば志穂ちゃんと会うのもはじめてだったし

 

岡本  あ!そうだったね、あいつのこと忘れてたわ

ピアノ、キーボードで「鳩と電線」「金色夜叉」の2曲へ参加した

左から 溝田志穂(Hermann H.&The Pacemakers)、こんのひよせ、岡本洋平

 

ひよせ ぶっ(笑)

そいでさ、いきなり会ってさ、でなんかアレンジもそっからやったじゃん、2曲とも

ああいうの、洋平くんの頭の中に(もともと)あって、あれをやったのか、あの場で考えたのか、どっちなんだろなと思ってたのね

 

岡本  あったね

 

ひよせ あったんだね!

なんかね、レコーディングは進んでいってるけど、だって最初どうなるのか着地点分かってないわけじゃん、わたしが

 

岡本  でも俺は分かってたから

 

ひよせ どうなるのかな~って(笑)

でもそれは別にこわくもないし、なんとかなるんだろなっていうか、とにかく楽しいだけだったから

あれはそうか、やっぱり頭ん中にちゃんとあって

 

岡本  溝田なんかにしてみてももう20年くらい一緒にやっててその俺のチャンネルっていうのを理解してるから

最初はちがうひと、とも思ったんだけど、ま色んな兼ね合いもあったけども

 

ひよせ やっぱりふたりのコミュニケーションがすごく早いくて

洋平くんが言ったことに対するレスが志穂ちゃん「こうだね」って言ったら「そう」って言う感じが

端で聞いてて全然分かんないの、ふたりがやってることが

 

岡本  あ、そんなもん?

 

ひよせ そう、ぜんぜん

 

岡本  いっつもそうだよ

 

ひよせ 普通の、作ったひととプレイヤーのひとの間の指示の関係とかじゃない、もう「阿吽の呼吸」だよね、あれは

もう「こっちだよね」みたいな。志穂ちゃんも慣れたもんで、「あーオッケーオッケーこっちか」「それ!」みたいな

 

岡本  まあ、あくまでもきっかけを与えてあげることが大事なんだけど、そうすればすぐ理解してくれるし

 

ひよせ あの時言ってたとは思うけど「さすが『この20年』!」みたいな

 

岡本  長年強引な要求をしてきたからさ、あのような(笑)

レコーディング風景 岡本のinstagramより

 

ひよせ 志穂ちゃんえらいなあ~と思ったよ。「これに答えてきたんだね」みたいな(笑)

 

岡本  だから、もう譜面云々じゃなくて

 

ひよせ そうだよね、譜面を必要としないってのがすごいおもしろいなあと思った

洋平くん最初っから言ってたからね「俺譜面いらないから」つって

「なにを言ってるんだろうこの人は」と思ったけど「ほんとにいらないんだ…」みたいな

 

岡本  でもさ。ああやって出来てく感じが好きなんだよね、俺は

なんか、言われたことをやるとか、ひとに求めるとかじゃなくて、マジック…

まあもちろん鳴ってるものはあるにしてもあの「金色夜叉」の間奏とかもそうだけど

 

ひよせ あれ、冴えたねえ!

 

岡本  でもあれはあれで、あれじゃなきゃいけないんだよね

 

ひよせ もう(最初から)そういう頭でいたんだ。あれが欲しいと思ってたんだ

 

岡本  俺、電話で口で言ったと思うんだけど(笑)

16分の、「タタタ、タタタ、タタタ、タタタ…」が必要なんだよ、つって

 

ひよせ どうなるのかなあって思ったもんね、レコーディングの時さあ

 

岡本  俺ん中ではもう出来てて

 

ひよせ あれに答える志穂ちゃんがえらかったよう

 

岡本  でもさ、バンドってそういうことでさ。ああいう話し合いばっかしてるわけで

そのやっぱイズムを、ひよせの音にちゃんと注入したい、じゃん、自分がやるならね

 レコーディングはSTUDIO MECHにて

 

ひよせ それすごいうれしかったもんね、バンドの感じがさあ入るわけじゃん、わたしの曲にさあ

わたしは今バンドとかやってないしさ、あんまりそーいうコミュニケーション苦手だからさ、むしろ

それを一緒に、その仲間に入れてもらえたみたいな感じで

「おーいいなやっぱり、バンド!」みたいな。分かり合ってる仲間がさ

 

岡本  まあ色々あったけどね(笑)

 

ひよせ 作り上げるのはさ、やっぱり信頼じゃん、信頼。すげえよかった

 

岡本  だからさ、出来ないってことはなくてさ

 

ひよせ わたし志穂ちゃんがソロをさ、弾いてる時にさ、ああこれは難しいから分けて録ったりとか後日でもいいかなとかいろいろ思ったんだけど

全然志穂ちゃんがめげないから

 

岡本  あいつめげないねー

 

ひよせ 全然。「やりますけど?」みたいな感じで

「この子、強い!」と思って

なんか不思議な子だったけどね

 

岡本  まあ20年間さあ、男5人プラス女ひとりでやってればさ(笑)

ふふふ、よくやれてると思うよ逆に言えば(笑)

 

ひよせ (笑)

 

 岡本  俺らみたいなバカに(笑)

 

ひよせ そうなんだね~

 

岡本  あいつが一番バカなのかもしれないね

 

ひよせ (笑)

 

岡本  一番酒飲みだしね

 

ひよせ そうだよね。ビール、うれしそうに飲んでたもんねえ…

楽しかったなあ…

 

岡本  打ち上げもひとりで最後までいるの。俺なんかけっこうすぐ帰っちゃうけど

 

ひよせ なんかわたしすごい友達になれる気がしたもんね(笑)

 

岡本  友達になってあげてよ(笑)家近いし(笑)

 

ひよせ 「わたしと同じくらい飲むわこの子!」と思った

 

岡本  すんげえ飲むよ

 

ひよせ なかなかいないよ、ずっと、打ち上げも最後までいるし、もちろん

あんまりいないよ…いい子だわ…仲良くしよ…

 

岡本  まあいろいろ、俺らもいろんな事があって、まあまた今続いてるわけだけども、まあね、楽なことばっかじゃなかったけど

なんだろね、もはや…まあ集まりゃそれで俺らじゃん、っていうだけの話で

こんのひよせ × 岡本洋平

 

岡本  なんかお互いに別に尊敬も無ければ(笑) 

 

ひよせ 無いの?(笑)

あるけど言わないっていうんじゃないの?

 

岡本  いやまあ「そいつはそこにいる」っつーだけだね

 

ひよせ でも「そいつがいい」ってことでしょ?

 

岡本  まあ僕らがやる場合は、それじゃないと出来ないから。違うひとじゃ出来ないから

 

ひよせ そういうのはでも、強いよね

 

岡本  うーん、なんなんだろね

 

ひよせ なんなんだろね

 

岡本  まあ10代から一緒にいるから

 

ひよせ そういうのって替えがきかないもんね、そこまで思えるひととかってもう

 

岡本  まあ「あいつが辞めたいこいつが辞めたい」っていったような時期もあったけどもちろん

でもなんだかんだ乗り越えちゃって、で今んなると「これもう一生終わんねえんだな」っていう、あきらめ?(笑)

 

ひよせ あきらめた(笑)

あきらめの境地に入った(笑)

 

岡本  まあでもバンドってそーいうことなんだろなって

 

ひよせ そこまでいけたらほんとに本物だよ、終わらないんだな、っていう 

 

岡本  ね、けっこう今みんなすぐ…やめちゃったり若いものにしても

まあむずかしい時期でもあるから色々考えるところはみなさんあるんだろうと思うんだけど

ま別に俺らの話はいいんだ(笑)

 

ひよせ (笑)そうだね、

なんか普通に「音楽雑誌のインタビュー」みたいんなった(笑)

 

 

〈終わり〉


今回の対談の公開はここまで。

3月の嵐のような風雨の中の収録だったにも関わらずふたりの話はこの後も続き、計4時間以上にのぼった。

互いにステージやスタンスは違えど、デビュー10年目にしてはじめての作品をリリースする彼女と、病魔と闘いながらもバンドを再始動させる彼の音楽への熱い気持ちは本物だ。

彼女と彼らが作り上げた音楽、ぜひチェックしてみてほしい。


こんのひよせ 1st Album

「ハトと電線」

2018年4月1日発売 

 

HYCD-001 ¥2,000(税込)

 

〈収録曲〉

1.彼女の名前

2.走る馬

3.鳩と電線

4.雪の降る街

5.ぎんのあめ

6.バス停で待ってて

7.金色夜叉