「ハトと電線」記念対談 第1回

こんのひよせ × 岡本洋平(Hermann H.&The Pacemakers) 「ハトと電線」対談

かつて数万枚の売上を記録したカバーアルバムの歌い手、こんのひよせが、ソロ初音源となるアルバム「ハトと電線」を2018年4月1日に発売する。

バンドでのデビュー以来10年。

その独特な活動スタイルから長らく謎につつまれていた彼女の音楽。

旧知の仲であり、今回のアルバム制作にも大きく関わった岡本洋平(Hermann H.&The Pacemakers)との対談の中で見えてきた今作のテーマとは。

アレンジから共に作り上げた楽曲への想い、そしてアルバムタイトル「ハトと電線」の意味を読み解く。

撮影 岡本洋平 / こんのひよせ

 

岡本洋平(Hermann H.&The Pacemakers)

Hermann H.&The Pacemakers,Vo,Gt。

1997年結成。

2001年ワーナーミュージックジャパンよりメジャーデビュー。

オフィシャルHP

 

こんのひよせ

2007年FIVE D+よりメジャーデビュー。

2009年バンド脱退後ソロ活動。

オフィシャルHP


第1回【それはね、多分俺が歌手だからなんだよ】

 

ひよせ じゃあ、なんか話をしなくちゃね…

 

岡本  どういう感じで

 

ひよせ どうしようかな…何を聞こうかな…

今回のレコーディングについて…

 

岡本  なんでも聞いてください

 

ひよせ そもそも今回のレコーディングは「鳩と電線」(アルバム「ハトと電線」M-3)を洋平くんがほめてくれて、

 

岡本  うん

 

ひよせ けっこう前にね。たぶんFacebook内のやりとりで「いい曲だね」ってほめてくれたのね

 

岡本  うん

 

ひよせ で、ちゃんとしたミュージシャンのひとがわたしの曲を「いい」って言ってくれるんだ!と思って。それで音源をつくりたいなと思ったの。だからわりとそこキッカケっていうのがあって

 

岡本  へーそりゃうれしいね

 

ひよせ だから洋平くんに参加してもらえたらいいなとは思ってたんだよね。それで声をかけて

ついでに「金色夜叉」(アルバム「ハトと電線」M-7)のほうをお願いしてみたら、やってくれて

あの曲こんなにいい曲になると思ってなかったから…

 

岡本  あれはね〜

 

ひよせ すごいね、びっくりしちゃったんだよね。「すっごいキラーチューンできちゃった!」って

 

岡本  なんかその、もらって、いわゆるデモを聴いてみたときに、言葉がいいのと、

 

ひよせ ありがとうございます…

 

岡本  なんていうの?すぐコードだったり…が思いついたから

あ、これはもう「こうなってくべき曲なんだろな」っていうのが

 

ひよせ あれは聴いてすぐに思いつくもんなの?アレンジみたいのもさ

 

岡本  うんうん

 

ひよせ デモと変わってるとことかさ、あってさ

 

岡本  あったけど、まあそのメロディとコード進行の、まあ俺の中でだけども「整合性」みたいなものはすぐ思いついたから

まあこれは「こうなってくべきなんでしょう」っていう

 

ひよせ えへへへへ

筋道がこう、見えた感じなんだ

 

岡本  そうね。だからけっこうすぐにアレンジして送ったし

 

ひよせ 早かったね! 

 

岡本  うん、早いんだよ

 

ひよせ びっくりしたよ

なんかさ、ウォーキングしながら…

 

岡本  そう、やってたよ

 

ひよせ でなんか、送られてきて

 

岡本  聞きながら歩いてて

 

ひよせ びっくりした、その作り方 

こんのひよせ × 岡本洋平(Hermann H.&The Pacemakers)

江ノ島の名店「文佐食堂」にて

 

岡本  なんかまあ、もうそうなっちゃえば音に落としこむってことは簡単だから

あの、こねくりまわさなくてもね

 

ひよせ 最初のインスピレーションというか、ポンとこう

 

岡本  あのサビがあるじゃん、「今月今夜の~♪」ね

あれがもう「あーこの曲もうこれがあれば勝ちだな」っていうのが俺の中ですぐ分かったから

 

ひよせ あれいいよねあのサビね(笑)

 

岡本  そうそう、だからあとはまあ言い方は変だけど「いかにサビをどんどんよく聴かせるか」っていう為のトラップをほかのメロディの中に作ってあげれば絶対もっと良くなるなって俺は思ったのね

 

ひよせ なんか、デモよりもシンプルになって、

であの志穂ちゃんのピアノの間奏のとこができて…(※注 今作には岡本のバンドメンバーである溝田志穂がPf.Key.で参加している)

 

岡本  そう、ピアノも絶対必要だったんだよ 

 

ひよせ それもね、すぐ早い段で「その音があったら」みたいなことを言ってたもんね

 

岡本  そう。たとえば、「ロマンチックにする」とか「ドラマチックにする」とかっていうのは意外と簡単な手法で、まあ色々やってきた中でも思うんだけど

まあ基本的に(この曲)すごくシンプルじゃん。アンサンブルも

 

ひよせ 楽器少ないもんね

 

岡本  ウクレレと歌とピアノだけ

まあパーカッションみたいなのはあるけど

で、そこであの曲の世界観とか。決して昼間じゃない

 

ひよせ そうね、そうね。月ですしね

 

岡本  なんとなく俺ん中で夜だとしても時間帯がどこなんだ、夜中なのか、夜明けなのか…

 

ひよせ あ、そう!なんかそれ聞かれた覚えがある

 

岡本  聞いた、あははは

 

ひよせ でもあれわたし多分間違えたんだよね、返信間違えた気がすんだよね…

なんかね…なんて答えたんだっけ…なんかでも聞かれたんだよ、その歌詞の内容について。それで「ちゃんとこういうことも聞くんだ!」と思って…

 

岡本  すごく大事じゃん

 

ひよせ 大事だね

 

岡本  聴くひとにとってみてさ、聴いて一発でヒットする時って

 

ひよせ そうなんだけど、アレンジとかする時って、歌詞の方からのアプローチみたいのってわたし今までやってきたなかであんまりそういうの無かったなあと思って

 

岡本  それはね、たぶん俺が歌手だからなんだよね

 

ひよせ おお~!そうか

 

岡本  うん、やっぱすごくシチュエーション大事で、

シチュエーションというか自分がその世界に入り込む時の

 

ひよせ あーなんか納得できる。歌ってるからね

 

岡本  だって今、たとえばこれ昼間で雨降ってて(対談時)、こんときにすんごい晴れたさ、さわやかな歌を想像しろと言われても…なんだけども

だからその作ったひとが、どういうシチュエーションでどういう気持ちで書いたのかっていうのがそのアンサンブルを作る時にはすごく大事でさ

岡本洋平(Hermann H.&The Pacemakers) 

 

岡本  ただ音楽的に整合性があって、きれいにまとまってればいいってことではなくて

俺がピアノを使いたいと思ったのは、なんかその歌の世界と歌詞に、ずっと主人公が「歩いてる」感じがしたのね

 

ひよせ うんうん、

歩いてます、歩いてます

 

岡本  で、そのリズムが欲しくて

 

ひよせ あれ、歩いてるって歌詞に書いてあったっけ?

(※注 ちょっとだけあります)

 

岡本  ないよ

(※注 ちょっとだけあります) 

 

ひよせ よく分かったね

 

岡本  いや、そんな気がしたのね

 

ひよせ はあ~(ため息)

 

岡本  そのリズムがドラムじゃないし、ピアノのコロコロ転がってく…

 

ひよせ そうトコトコ歩いてるからね、ドンタカドンタカとかじゃないし

 

岡本  そう。ひとりの女性、というイメージで、ピアノがいちばん近いな、シンセサイザーとかプログラミングでなんとかやるっていうことじゃなくて

 

ひよせ ぴったりだったね、ピアノの感じね

 

岡本  そうそう

で、ギターじゃなくてウクレレにしたかったのはなんかその女性のやさしさ、みたいなところをあの曲の中のね、やわらかさみたいなところを、まあたぶんそっちの方がいいんじゃないかなーみたいな

 

ひよせ そうすごいぴったりだった 

 

岡本  まあひじょうに、いい曲だと思う

 

ひよせ ふふふふふふふ(笑)

 

岡本  まあ俺がやったことなんてさ、ちょっと思いついたことを音にしただけで

で、トラップを作っただけだから

 

ひよせ でも全然違う感じに、違うっていうかいい感じになってるからね

 

岡本  なにしろあのサビがなければそれは無いので

まあそこを作ったのはものすごく素晴らしいことだし、やっぱそれをこう、まあただ「もっと良くしようぜ」っていうだけの話だよね

 

ひよせ なんか「アレンジの力」っていうのをすごい感じたよ

やっぱひとりの、この中からは絶対出てこないし

 

岡本  それがひととやるおもしろさだったりね

 

ひよせ わたしあんまりそういうの、わりとひとに任せられない性格なのね、こうみえて

あんまり、ひとのこと信用してないわけじゃないんだけど…

初のソロオリジナルアルバムを発売する こんのひよせ

 

岡本  まあ自分のなかでイメージとゾーンがね(笑)

 

ひよせ 自分のイメージが大事だから、っていうことで

でもそう、あの曲に関してはほんとにぽーんとおまかせ出来て、

返ってきたものが、ものすごいものが返ってきたから「わあ~!」っていう

 

岡本  まあそのイメージをもっと良くすんのが僕らの仕事、じゃん? 

ねえ、それがもっと「あれ?なんか思ってたのと違う方行っちゃった」とか

 

ひよせ あはは(笑)

 

岡本  まあ、無くもない話だけど(笑)

 

ひよせ けっこう、いや多いよそれは(笑)

 

岡本  なんか「上手できれいだけど、ちょ、ちょっと…」ていうさ

 

ひよせ なんかさあ、損なわれていく感じがわりと多いっていうか

 

岡本  そうなのよ

 

ひよせ むしろ、一人で作ってるほうが濃くて、ひとにアレンジをしてもらうとどんどん何かがちょっとずつ抜かれていくっていうか損なわれていくっていうか、薄まるとかが

 

岡本  そこが俺がもっとも避けたかったことだし

 

ひよせ 今回はほんと、濃くなったからね

 

岡本  それは、俺がいつもひとからお願いされてやるときに一番考える、

ま一番自分が歌手だからってのがでかいんだけど

 

ひよせ それは、そうなんだろうね

プレイヤーっていうだけじゃなくて、歌を…

 

岡本  気分じゃん、歌なんて

 

ひよせ 気分ね~(笑)

 

ふたり ふははははは

 

岡本  気分じゃん(笑)

だからその気分を殺しちゃったら…

 

ひよせ はははは。とくに、特に洋平くんの場合は歌も、テクニック寄りじゃなくて、ほんとに気持ちとかの方が強い歌だからだよ

歌い手さんでもテクニック寄りのひともいるから。そっちじゃないから、だと思うよ

 

岡本  そりゃ多分ずっとロックバンドやってきたのもあるんだけど

それだけじゃねじ伏せられない何かがあるからね                 

 

ひよせ ロックには?

 

岡本  ん、まあ俺が思う「音楽」にはね

だし俺も別にそんな技術派じゃないから、だからやっぱりいいエキスっていうかさ、いいところってみんなにそれぞれあるわけでさ、それをまあ俺がやるんだったらっていうとこになっちゃうんだけど

きれいに仕上げることは簡単なんだ。逆に言えば

 

ひよせ 簡単、か

それも簡単ではないけどね、きっと…

 

岡本  思いつかなくていいんだもん、

整合性を求めてけばいい…

 

ひよせ 計算みたいなもん?

 

岡本  そうそうそう

 

ひよせ 足し引きで、足して引いてかけて色々やって100にすればいいみたいな…

…おお~!びっくりした~~~!!!

(猫が窓の目の前を横切る)

うふふふふ(笑)

岡本のホームタウン湘南、江ノ島の食堂で行われた対談。

映画のロケ地にもなった名店「文佐食堂」での対談は終始アットホームな雰囲気で行われた。

 

のら猫登場で話は中断?

続きます!第2回へ